WAKAVA-Prologue 3

Crystal storm avalanche

この1月、WAKAVAの会の仲間とSNSで議論しているうちに、雪崩を起こしやすい雲粒なし結晶(降雪結晶という人もいる)がどんな状況で大量に生まれるか。納得のいく説明ができるようになった。

層雲、地形性上昇気流、湿潤性断熱膨張など気象学の教科書に載っている用語を理解すると、議論は楽になるのだが、今日は割愛しよう。

強風下のCrystal storm -WAKAVA -Story-

              1.  粉塵破壊の極 → 
              2.  結晶の液膜が厚くなる → 
              3.  ベタベタ氷片同士が絡み肥大 → 
              4.  風衝突による破壊頻度増加 → 
              5.  ベタベタ粉塵量産 → 
              6.  wind slab形成 → 
              7.  面発生雪崩

サラサラ雪の雪崩を思い描いて、愛読書の一つ、小林禎作著「雪の結晶 自然の芸術をさぐる」(講談社ブルーバックスB-163  1970年) を読み直した。するとびっくり、サラサラの逆だった。

大きな水滴は雪結晶と衝突してそのまま凍り、雲粒付き結晶となる。付着した雲粒の直径を調べると、直径5ミクロン以下のものはほとんどない。これ以下の微水滴は氷の結晶表面全体にごく薄い水の膜として広がる。(p.288)

液膜はおそらく塩分など不純物を含み、凝結温度は低い。マイナス15℃ぐらいでも厚みを増した液膜のせいで、結晶はニチャニチャと他の結晶と絡みやすい。

上昇気流の中で絡んで少し大きく成長しては衝突回数が増え、粉砕されカケラが飛び散る。これが、小さな雲粒なし結晶が量産される仕組みであろう。

10ミクロンレベルのカケラに羽や針状の破片もまじる。雲粒なし結晶のたいていは無垢の角板結晶、角柱であろう。

積雪層の中には、無風~微風時に降り、雪片衝突破壊を免れた、密度の小さい層もある。この層が周囲の雪層の歪み変形に耐えきれず、破壊して弱層の役割を担う。

凍雨・凍着の多いstorm

湿潤性断熱膨張による気塊のひろがりで、気塊の中の水蒸気は氷晶に変化して潜熱を出す。潜熱で温められた氷晶によってCrystal Storm Avalancheは起こりやすい。同時に上空には微水滴が沢山生まれ、風の中で凍雨や凍着という現象が生まれる。

95年1月4日午前11時、中央アルプス千畳敷カール。過冷却水滴が激しく降る中で雪崩が起こり、6名の登山者が埋まった。水滴は人や雪面に触れると即、氷になる。だから雪崩専門家の調査では、雪層がぬれていない「乾き雪」の大雪崩であった。

事故から3時間後、いざ救助隊や救助犬が里から上がるという段になって、ロープウェイのケーブルに氷が付着して、誰一人として山に上がってこれない。

3000mクラスの鋭鋒では、乱層雲が高度7000mほどに及び、こうした荒々しい現象は珍しくない。一方、真冬に開水面が少なく、山岳高度も1000m以上低い北海道では、中層雲の発達が抑えられて「すり抜け」程度のケースが多くなるのかも知れない。

参考までに叩き台としてAvalanchistの現在の考えを下に表示する。

関連記事